2017年12月2日土曜日

サンタクロースっているんでしょうか? - "IS THERE A SANTA CLAUS?" as book.




感銘深い、心の本


サンタクロースっているんでしょうか?は、中村妙子(なかむら・たえこ)訳、東逸子(あずま・いつこ)絵による書籍である。

偕成社(かいせいしゃ)から1977年12月に初版が発行された。何度かの改訂や増刷を重ね、2017年10月現在で121刷に達している。40年以上に渡って売れ続けるロングセラーといえよう。

クリスマスやサンタクロースを題材に扱った中でも、特に有名な書籍のひとつである。


当時8才だった少女バージニア・オハンロンが、アメリカのニューヨーク・サン新聞に手紙を宛てた。



きしゃさま
あたしは、八つです。
あたしの友だちに「サンタクロースなんていないんだ。」っていっている子がいます。
パパにきいてみたら、「サンしんぶんに、といあわせてごらん。しんぶんしゃで、サンタクロースがいるというなら、そりゃもう、たしかにいるんだろうよ。」と、いいました。
ですから、おねがいです。おしえてください。サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?


これを受けたニューヨーク・サン新聞の編集長は、同社の記者フランシス・P・チャーチ(1839-1906)に、返事を社説で書いてみないかと持ちかけた。そして社説ができあがり、1897年9月21日に掲載された。

今では古典のように扱われ、アメリカではクリスマスの時期が近づくと、あちこちの新聞や雑誌に繰り返し掲載される。

私は、90年代に放送されたテレビ番組と、やはり90年代に雑誌で企画されたクリスマス特集(いずれも日本国内)で、この話を知った。


社説に書かれた結論を明かすと、チャーチ氏は、

  • サンタクロースなんていないんだという、あなたのお友だちは、まちがっています
  • サンタクロースもたしかにいるのです。

と明言している。

原文が素晴らしいのか、翻訳者の表現が優れているのか、それを説明する展開や表現が実に見事であり、魔法のような読後感を味わえる。

存在しないという証明は、論理学的に不可能である。その考え方を「サンタクロースがいる」説明に利用しているわけだが、8才の女の子相手に、夢を壊さず、少ない言葉数で、それなりの説得力で説明を遂げたチャーチ氏の機知、表現、ユーモア、センス、知性にはまさに脱帽である。


なおこの社説が新聞に掲載されたのは、前述のとおり9月である。クリスマスにまつわるこんな優れた内容なのに、12月ではないのが惜しい気もするが、なにせ実話なので、そこまで日付のタイミングが完璧でないのは仕方がないのだろう。


アメリカだから、できること?


子供から寄せられた「サンタクロースっているんでしょうか?」という質問を、大手新聞社が社説で正式に回答するのは、日本では考えられない。100年前も、今も、きっとこれからも。

新聞社でなくとも、それが雑誌でもテレビ番組の視聴者相談コーナーでも、質問として受理すること自体基本的にないだろう。なぜなら、大人が聞いても子供が聞いてもそれなりに納得できて、夢を壊さず、露骨に現実を見せず、それでいて嘘もつかない、そんな回答がほとんど不可能に近い質問のひとつだからだ。

100年前のアメリカでニューヨーク・サン新聞でこの社説が実際に掲載された時も大反響を呼んだというから、当時のアメリカでもかなり画期的な出来事だったのだろう。それでも社説を掲載する判断をしたのは、大したものだと思う。

なお、この書籍を読んで感銘を受けた人がいたとして、子供に「サンタクロースがいるよ」などと安易に説明するのは、私は勧めない。子供たちの間で「何歳まで(存在を)信じていた?」と相手を試す会話は、いつの時代でもきっとある。そこで無邪気になってムキになって「サンタクロースは、いるよ!」と発言すると、からかわれたり、いじめの標的になりかねない。ただ、相手が子供でもある程度物事の分別ができそうなら、文の奥に隠された真意を理解できそうなら、サンタクロースの存在を信じる信じないに関わらず、この書籍を与えるのは大いに有効だと思う。

そしてこれは、内容も絵柄も上品な子供向け絵本でありながら、実は大人向けのおとぎ話なのだろうと、読んでから気がつく。


有史以来、物議を醸した社説など、様々な国で様々な時代で、星の数ほどあるだろう。

その中で、この社説は「もっとも有名で、もっとも偉大」と評するにふさわしいと私は思う。


トナカイは、いる!


今回この本を調べるにあたって、サンタクロースの話題をいくつか調べた。その中で偶然、トナカイについて知る機会を得た。

実は私は、トナカイを架空の動物だとずっと思い込んでいて、実在する動物だとは思いもしなかった。というのも、あんな立派なツノを生やしたシカみたいな動物がいるなんて話が出来すぎているので、ペガサスみたいに羽を生やした馬が実在しないのと同じように、創作上の動物だと思っていた。どこかの大地で佇む写真も見たことはあるが、ディズニーランドの風景のように精巧にできた作り物だと思っていた。

成人をとうに過ぎた年齢の人間が、他人に向かって「トナカイって本当にいると思う?」と尋ねるのは、「サンタクロースって本当にいると思う?」と聞くのと同義で、相手の反応を試すような意地が悪い質問だと思い、問う気もなかった。「トナカイが実在しない」とわざわざ言うのは夢を壊すようで野暮だから発言すべきではないと思い、暗黙の了解として、もちろん誰にも言わなかった。

トナカイが実在の動物だと知ったとき、驚いて周りに話すと「そりゃ、トナカイは、いるよ」「鼻も赤くないし空も飛ばないけど、実在しますよ」「東京だとまず見かけないけど、北海道あたりだと、普通にいるんじゃないんですか」とあっさり返された。

今回調べて勘違いに気づかなければ、トナカイは架空の動物と思ったまま生涯を終えたのだろうなと思う。

もっとも、トナカイが実在したとしてもそうでなくても、自分の生活になんの影響も及ぼさないので、たまたま知る機会がなかった。といえばそれまでだけど。でも……なんか悔しい。


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